ヒノキチオールは、青森ひばに比較的多く含まれる結晶性酸化化合物です。ヒノキチオールを含有する他の樹種として、台湾ヒノキ(台湾)、ウエスタンレッドシダー(北米)などがあげられますが、日本のヒノキにはほとんど含まれていません。
1936年に台湾ヒノキ油から単離されたのが最初で、ほぼ同じ頃スウェーデンの学者も別個に同じ化合物の単離に成功しました。当時はトロポロン骨格を有することで非常に注目されました。最近、青森県工業試験場の岡部敏弘博士らによってヒノキチオールの強い抗菌性と広い抗菌スペクトルが明らかにされ、あらたな注目を浴びるに至っています。
(1)独自技術による高純度の製品(天然品の成分はヒノキチオールのみ)です。比較的安価に供給できます。
(2)ヒノキチオールは低毒性で稀にみる広い抗菌スペクトルをもっています。
(3)殺菌、消炎、細胞活性効果があり、育毛・養毛剤にも使われています。
(4)青果物のエチレン生成抑制や呼吸抑制効果もあります。
(5)水に微溶(0.1%程度)、アルコール・エーテル・炭化水素剤に可溶です。
(6)昇華性があり、密閉空間等では蒸気発散により抗菌性を発揮します。
実用例
将来性
最小発育阻止濃度(MIC)とは、菌の増殖を阻止するために必要な抗菌剤などの最小濃度です。MICの値が低いほど菌に対する抗菌効果が高いことを示します。(数値=ppm)
菌種 | 天然ヒノキチオール | ソルビン酸 |
大腸菌 | 20 | 2000 |
枯草菌 | 50 | 1000 |
黄色ブドウ球菌 | 100 | - |
緑膿菌 | 200 | - |
酵母 | 50 | 500 |
黒カビ | 50 | 2000 |
くものすカビ | 10 | 1000 |
ヒノキチオール(抽出物):ヒノキ科ヒバ等の木部や根部を水蒸気蒸留し得られる油分を分解精製し得られたもの。
構造式 | C10H12O2 | |
化学名 | ヒノキチオール β-ツヤプリシン 4-イソプロピルトロポロン | |
性状 | 無色から淡黄色結晶、昇華性あり 弱酸性(0.1%水溶液pH3.5〜4.0) 金属イオンと接して塩を形成しやすく、着色する | |
物性 | 融点:50〜52℃ 沸点:140℃/torr 溶解性:水に微溶(0.1%程度) アルコール、エーテル、 炭化水素溶剤に可溶 | |
公定書 | 既存化学物質番号 9-1526 TOSCA記載 CAS No.499-44-5 化粧品原料基準 第2集 注解1 | |
安全性 | 急性毒性 LD(50)カエル マウス MLD モルモット | 163±45mg/kg 650±50 1000 |
慢性毒性 体内への残留性を認めず |